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介護費用、平均いくらかかる?自己負担額を軽減する制度もFPが基礎からわかりやすく解説

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「親の介護をすることになったら、いくらのお金がかかるんだろう?」

このように不安を感じている人は多いのではないでしょうか。まずは、生命保険文化センター等の公的サイトが公表している介護の平均額を知ることから始めましょう。

ただ、介護費用は家庭ごとに全く異なるため、自分の家庭でかかる費用を具体的にイメージすることが大切です。

本記事では介護費用の平均や、費用負担をカバーしてくれる公的介護制度、介護費用を準備するためのポイントなどを解説していきます。

監修者
監修者佐藤 拓也

全国に約800世帯、約1100名のクライアントを抱えるファイナンシャルプランナー。

家計相談や生命保険の見直し、資産運用の相談、相続・税務対策など幅広く活動し、年間200世帯以上のお客様と個別相談を行いながら、子育てにも尽力している二児のパパ。

【保有資格】
・MDRT入賞9回 ・TLC(生命保険協会認定FP) ・CFP ・IFA(証券外務員1種) ・ファイナンシャルプランニング技能士1級

\介護のお金のこと、相談したい/
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親の介護には平均してどのくらいの費用がかかる?

家族や親族が高齢になったとき、介護を意識する人は多いでしょう。実際に親や親戚が歩けなくなったり認知症になったりすれば、子の世代が介護費用を出すこともあります。

ここでは生命保険文化センターの調査結果より、介護にかかる平均費用について解説します。

介護費用の平均は500万円以上ともいわれている

生命保険文化センターが公表している「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度」によれば、平均して500万円以上の介護費用がかかります。

出典:2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査〈速報版〉

同資料によれば月々の介護費用の平均は月8.3万円、平均的な介護期間が61.1ヵ月です。

単純な計算ですが、「8.3万円×61.15071,300円」と、500万円以上の費用がかかる計算です。

介護が必要な方の状況はそれぞれ異なりますが、ひとたび介護が必要になるとこれだけのお金がかかってくる場合があるということを押さえておきましょう。

月々の平均は月8.3万円

まずは、月々の費用について見てみましょう。

介護に必要な費用の平均は8.3万円というデータになっており、これが毎月のようにかかるとかなりの負担になることが分かります。

ただし、介護を行った場所ごとに介護費用が大きく異なる点に注意が必要です。在宅介護では毎月の支出が4.8万円と平均よりかなり低い一方、施設での介護の場合は平均で毎月12.2万円の費用が発生することがデータで示されています。

また、要介護度によっても平均的な介護費用の月額は以下のように異なります。

要介護度 毎月の介護費用の平均
要支援1 4.1万円
要支援2 7.2万円
要介護1 5.3万円
要介護2 6.6万円
要介護3 9.2万円
要介護4 9.7万円
要介護5 10.6万円

 

介護期間の平均は61.1ヵ月

介護を行う期間は家庭ごとに大きく異なるので一概にはいえませんが、同資料によれば介護期間の平均期間は61.1ヵ月(5年1ヵ月)です。

介護期間が4年を超えた人は約5割にものぼり、基本的に介護の期間は長期化しやすい傾向があることがわかります。

要介護度 毎月の介護費用の平均
要支援1 4.1万円
要支援2 7.2万円
要介護1 5.3万円
要介護2 6.6万円
要介護3 9.2万円
要介護4 9.7万円
要介護5 10.6万円

 

介護費用の負担を軽減するための「介護保険制度」とは

前章で紹介した金額は、公的な介護保険サービスを利用することが前提の金額です。介護保険を利用したとしても1人の介護で500万円前後の費用がかかることも考えると、介護が必要になった際はすぐに要介護認定の手続きをすることが大切です。

介護の準備をするなら、介護保険制度の概要について知っておくことも重要です。要介護の申請をすると市区町村の調査を受けて要介護、または要支援の決定がされます。

要介護度ごとに決められた利用限度額のうち、1~3割が自己負担額となります。

要介護・要支援ごとの1ヵ月あたりの利用限度額と利用者負担額(自己負担割合が1割の場合)は以下のとおりです。

要介護度 1ヵ月あたりの利用限度額

利用者負担額

(1割負担の場合)

要支援1 56,000円程度 5,600円程度
要支援2 117,200円程度 11,720円程度
要介護1 186,500円程度 18,650円程度
要介護2 219,200円程度 21,920円程度
要介護3 300,800円程度 30,080円程度
要介護4 344,100円程度 34,410円程度
要介護5 402,800円程度 40,280円程度

出典:大阪市「居宅サービス等の限度泊について」

介護保険サービスを使うと自己負担が3割以下になる

介護保険では、介護サービスを1~3割の自己負担で利用できます。自己負担割合は介護サービスを受ける本人や、同一世帯の65歳以上の配偶者や親族の合計所得で決まります。

厚生労働省によれば、自己負担割合の決まり方は以下のとおりです。

 介護保険制度における利用者負担割合(判定基準)

※第2号被保険者、資料損民税非課税者、生活保護受給者の場合、上記のフローにかかわらず、1割負担。
出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護保険部会(第107回) 給付と負担について(参考資料)」

本人の合計所得が160万円未満なら1割負担です。また、合計所得が160万円以上、220万円以下ということなら、年金収入とその他合計所得が280万円未満(夫婦世帯は346万円未満)なら自己負担1割で介護サービスを利用できます。

ご自身の両親が要介護になりそうな時から、年金やその他の所得を計算し、自己負担が13割のどこに当てはまるかシミュレーションしてみましょう。

毎月の介護サービスの自己負担額が大まかに分かるため、介護生活をイメージしやすくなります。

介護保険には支給限度額がある点に注意

介護保険は自己負担割合13割で利用できるのは前章で解説したとおりです。

しかし、健康保険(公的医療保険)と異なり、介護保険には限度額が設定されている点に注意しましょう。

毎月の介護サービス費用が限度額の範囲内であれば1~3割の自己負担で利用できますが、所定の限度額を超えた場合は超えた分が全額自己負担になります。

いくつかの介護サービスを同時に利用すると、介護費用が高額になってしまう可能性があります。 

介護施設を使う・使わない場合の費用感は?

実際に親や親戚を介護する場合、「自宅で介護をする」「施設で介護をする」という選択肢があります。すでに解説したとおり、基本的に施設で介護したほうが、かかる費用は高額になります。

ここでは、自宅での介護と施設での介護でかかるお金の費用感について紹介します。 

在宅サービスを利用した場合

在宅での介護を選択した場合、まず検討が必要になるのは自宅のリフォーム費用です。生命保険文化センターによればリフォームを含む一時的な費用に平均で74万円がかかっています。

参照:生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」

その代わり、施設と違って施設の利用料は発生しません。ポータブルトイレやシャワーチェアなどのレンタル費用やおむつ代、食事代などはリフォームとは別に必要になるでしょう。

例えば、自己負担1割の要介護2の人の場合、自己負担限度額は21,920円程度です。ただし、限度額を超えた場合は超えた分が、民間の介護サービスを利用した場合は全額が自己負担になるので注意が必要です。

施設のサービスを利用したとき

施設に入所した場合、生命保険文化センターの資料からも分かる通り、介護費用が高額になる傾向にあります。

ただし、公的な介護施設と民間の介護施設のどちらを選ぶかによっても費用感は変わります。

施設ごとに公的・民間どちらに分類されるか、以下にまとめたので参考にしてみてください。

公的な介護施設の例 民間の介護施設の例

・特別養護老人ホーム

・介護老人保健施設

・介護医療院

・ケアハウス

・介護付き有料老人ホーム

・住宅型有料老人ホーム

・認知症高齢者グループホーム

介護施設でも介護サービス分は介護保険が適用されますが、保険適用外の費用として「居住費」「食費」「管理費」などが発生します。また個室にするか大部屋にするかによっても費用は大きく異なるでしょう。

一例として、都内にある介護付き有料老人ホームに要介護3の人が入居する場合の費用の例を紹介します。

家賃 90,000円
管理費 54,500円
食費 56,040円
介護保険サービスの自己負担 21,676円
合計 222,216円

高額な介護負担を軽減させる制度

ここまで紹介したとおり、介護費用が13割負担でも施設に入居したり一定以上の介護サービスを利用したりすれば、自己負担が高額になりやすいです

ただ、公的制度には一定以上の自己負担が戻ってくるような制度もあります。介護の準備をする人は、今から紹介するような制度の概要を知っておきましょう。

高額介護サービス費

介護保険のサービス費用は所得区分によって月の上限が設定されます。

高額介護サービス費支給制度では、1ヵ月のあいだに一定の利用者負担限度額を超えた分が払い戻されます。

対象になるのは保険給付分のみであり、自宅改修の自己負担、施設入所中の食費、居住費等は含まれません。

高額介護サービス費の負担限度額(月額)は以下のとおりです。

区分 負担の上限額(月額)
課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 140,100円(世帯)
課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円)未満 93,000円(世帯)
市町村民税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満 44,400円(世帯)
市町村民税非課税世帯 年全の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下 24,600円(世帯)
15,000円(個人)
生活保護を受給している 15,000円(世帯)

出典:厚生労働省「高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」

特定入所者介護サービス費

特定入所者介護サービス費は、所得が低い人の介護施設における食費・居住費を軽くする制度です。

施設に入居したときの食費や居住費は基本的に自己負担ですが、所得の低い人に対しては自己負担限度額を超えた分が介護保険から支給されるようになります。

ただし、自動的に適用されるわけではない点に注意が必要です。特定入所者介護サービス費を受け取りたいなら住まいの市町村への申請が必要です。 

会社員の人は介護をサポートする公的制度を知っておこう

会社員の人は、仕事と介護の両立をするのが非常に大変です。そこで、これから紹介する公的制度を上手に利用しましょう。

介護休業制度

介護休業制度は、労働者が要介護状態にある家族を介護する場合に適用される休業制度です。

対象家族1人につき通算93日までの範囲内で、3回まで介護休業を取得できます。対象家族は父母や子供だけでなく、配偶者の父母や祖父母、兄弟姉妹も含みます。

ただし、パートやアルバイトなど有期雇用の場合は以下の条件を満たすことが必要です。

取得予定日から起算して、93日を経過する日から6か月を経過する

日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。

出典:厚生労働省「介護休業とは」

介護休暇制度

介護休暇は、要介護状態の対象家族を介護するために取得できる休暇です。1年につき5日まで、対象家族が2人以上の場合は10日まで取得できます。

1日単位だけでなく、時間単位で取得できる点がメリットです。また、自分が介護する場合だけでなく、通院の付き添いや介護サービスの付き添い代行、ケアマネージャーとの打ち合わせといった、家族の介護に関連する内容なら取得可能です。

ただし、労使協定が結ばれている場合、「入社6ヵ月未満の労働者」や「1週間の所定労働日数が2日以下の労働者」は介護休暇制度の対象外になるので注意が必要です。

医療費を軽くする制度も同時に覚えておこう

介護費用と合わせて介護する側が心配するのは、医療費に関することではないでしょうか。要介護の人は毎週のように病院に通うことも珍しくなく、場合によっては医療費が高額になります。

その時になって慌てなくても良いように、医療費を軽くする公的制度も今のうちに把握しておきましょう。

高額療養費制度

高額療養費制度は、1ヵ月(同じ月の1日~末日)のうちに医療機関に支払う医療費や薬局で支払う薬代などが一定額を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。

自己負担限度額は、年齢(70歳未満か70歳以上か)や、それぞれの所得によって異なります。

例えば70歳未満で月収が2751.5万円未満の人の自己負担限度額は以下のように計算できます。

80,100+(医療費-267,000円)×1%

参照:生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」

また、同一世帯で直近12ヵ月に3回以上の高額療養費が支給されている場合、4回目以降の自己負担が軽減される「多数該当」という制度もあります。

高額介護合算療養費制度

同一世帯において、1年間に支払った「医療保険」「介護保険」の自己負担合算額が一定以上の高額になった場合に、限度額を超えた分が払い戻される制度です。

医療費と介護サービス費を合算する場合の自己負担限度額は以下のとおりです。

70歳以上の人がいる世帯の例)

負担区分 自己負担限度額
課税所得690万円以上 212万円
課税所得380万円以上 141万円
課税所得145万円以上 67万円
課税所得145万円未満 56万円
市町村民税非課税 31万円
市町村民税非課税(所得が一定以下) 19万円

出典:大阪市「高額医療・高額介護合算療養費制度のお知らせ」

医療費控除

医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までの1年間で一定額以上の医療費を支払った場合、申告すると所得税などが軽減される制度です。

1年間に支払った医療費から10万円または所得の5%のいずれか少ないほうが医療費控除になります(上限200万円まで)。

ただし、自動的に還付されるわけではなく、毎年216日から315日までに前年の所得について確定申告をするなど条件を満たすことが必要です。

高額な介護費用をまかなったり介護負担を減らしたりするには若いころからの準備が大切

最後に、高額な介護費用をまかなうための対策や、介護負担を減らしたりする対策について紹介します。

いきなり介護が始まると、働き盛りの世代は急な介護に対応できないことがあります。いつ介護が始まっても良いように、介護する側が若く時間があるうちから準備を進めておきましょう。

役割分担や介護の方針を事前に決めておくことが重要

介護に関して気になることはお金だけではありません。介護の方針や役割分担を決めておくことも重要です。

まず、介護を受ける人の希望を聞いたうえで、「どんな介護をしていくのか」ということを介護する側で話し合いましょう、介護をする人の時間やお金の余裕は家庭ごとに異なるため、必ずしも介護される側の希望を実現できるか分からないためです。

在宅で介護するなら毎月の自己負担を抑えられますが、誰かが同居したり近くに住んだりしてサポートしなければいけません。それができないなら施設への入居を検討することになりますが、費用をどう工面するかという問題が生じます。

また、介護する人に兄弟姉妹がいるなら、1人が全てを負担しないような役割分担を決めておくことも大切です。役割分担を決めておくことで急な状況変化でも対応しやすくなり、家族の関係性悪化を防ぐこともできます。

NISAiDeCoによる資産運用

親が介護用の貯金を用意していない場合、子供の世代で介護費用を出し合うことになる可能性もあります。いつでも引き出せる貯金で貯めておくのがセオリーですが、低金利の現在では普通預金だけではなかなか資産は増えません。

資産の一部を投資に回し、効率的に資産運用する方法も検討しましょう。

特におすすめできるのは「新NISA」「iDeCo」といった非課税制度を利用することです。

NISAは最大1,800万円まで投資でき、その枠のなかで得た利益が全額・無期限で非課税になります。金融庁が認めた特定の投資信託を毎月コツコツ積み立てられる「つみたて投資枠」もあり、初心者でも資産形成がしやすいです。

必要なときに引き出すこともできるため、比較的早い段階で介護が始まったときに介護費用として利用できます。

iDeCoは「個人型確定拠出年金」の略称で、自分で運用商品を選んで運用する私的年金制度です。

拠出した金額には職業によって上限が決まっていますが、拠出額の全額が所得控除になって所得税や住民税が安くなる税制メリットを得られます。運用期間中の利益は非課税で受け取る際にも控除が受けられる点も魅力です。

60歳以降にならないと受け取れないデメリットがありますが、60歳以降に両親の介護が発生した場合や、自分の老後資金をメインに資産形成したい場合に有効です。

2024年から始まる新NISA制度とNISA制度改正をFPが徹底解説!

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)とは?3つのメリットや仕組みをわかりやすく解説

民間介護保険

公的介護保険では自己負担割合の範囲内で一定のサービスを受けることはできますが、民間サービスや施設の居住費などは介護保険の対象外です。

そんなときのために、民間の介護保険を利用するという選択肢もあります。民間の介護保険では一定の要介護状態になったり、保険会社が指定する一定の基準を満たしたりした場合に、給付金を受け取ることができます。

公的介護保険のように介護という現物給付ではなく、金銭を受け取れるのが大きな特徴です。給付金の使途に制限がないため、介護保険対象外のサービスの支払いなどに柔軟に利用できます。

まとめ

実際にかかる費用は介護する場所や介護の内容、施設の種類によって一定ではありません。介護する人同士で介護の方向性を話し合ったり資金を準備したりしたうえで公的な保険制度をフル活用することで、介護を乗り切ることができるでしょう。

ただ、今回紹介したように、介護に関する保険や給付制度は多岐にわたります。不安がある人は、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談することをおすすめします。

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