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持ち家と賃貸、どっちが得?メリット・デメリット、生涯コストを徹底比較

持家か賃貸 住宅ローン

衣食住という言葉がある通り、住宅は生きていくうえで欠かせないものです。ライフステージが進むと「賃貸と持ち家のどちらがお得なのか」について、気になりだす人もいるのではないでしょうか。

一般的に家賃がずっと発生する賃貸のほうが、持ち家よりもコストが高くなりやすいといわれていますが、本当のところはどうなのでしょうか。

本記事では、持ち家と賃貸のそれぞれのメリット・デメリットとそれぞれの生涯コストのシミュレーション、さらに、持ち家・賃貸に向いている人の特徴についても解説します。

監修者
監修者佐藤 拓也

全国に約800世帯、約1100名のクライアントを抱えるファイナンシャルプランナー。

家計相談や生命保険の見直し、資産運用の相談、相続・税務対策など幅広く活動し、年間200世帯以上のお客様と個別相談を行いながら、子育てにも尽力している二児のパパ。

【保有資格】
・MDRT入賞9回 ・TLC(生命保険協会認定FP) ・CFP ・IFA(証券外務員1種) ・ファイナンシャルプランニング技能士1級

 

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持ち家と賃貸ではどのようなメリット・デメリットがある?

「持ち家」は、自分の家を所有していることです。新築の一戸建てをイメージしがちですが、そのほかに中古の一戸建てやマンションの一部屋を購入することも持ち家に含まれます。

 ここでは、持ち家と賃貸物件それぞれのメリット・デメリットを紹介します。

持ち家のメリット

持ち家のメリットとして考えられるのは、主に以下の4つです。

  • ・自分の資産になる
  • ・建て替えやリフォームが自由
  • ・住宅ローン完済後は住居費が大幅に減る
  • ・持ち家は住宅ローン控除によって税負担を抑えることができる

ここでは、それぞれのメリットの詳細を解説していきましょう。 

メリット①自分の資産になる

持ち家ならではのメリットとして考えられるのは「自分の資産になる」ということでしょう。

自分の資産なので、住宅ローンを完済して抵当権を外すことができれば、将来的にお金が必要になれば自由に売却することができます。あるいは、自宅を担保にすることで新しいローンを組むことも可能です。

銀行や消費者金融が展開する不動産担保ローンのほかに、「リバースモーゲージ」と呼ばれるシニア向け制度もあります。

【リバースモーゲージ】

自宅を担保にして毎月の年金形式などでお金を受け取る融資制度。生存中は利息のみ返済し、本人が死亡したあとに自宅を売却して元金を返済する

万が一のときは自分の資産として有効活用できる点は、賃貸にはない大きなメリットです。また、再開発などの理由で地価が高騰する可能性もあり、相続財産として遺そうとする人も少なくありません。

メリット②建て替えやリフォームが自由

賃貸の場合、部屋の壁を壊したり手すりをつけたりと、自由にリフォームして住みやすくするようなことはできません。

一方、持ち家であれば自分の健康や年齢にマッチするように自宅を自由にリフォームできます。

持ち家には「一戸建て」「マンション」がありますが、特に自由度が高いのは一戸建てです。なかでも「注文住宅」なら庭から室内まで自分の自由に設計できます。

マンションでリフォームできるのは専有部分のみと一戸建てよりは自由度は低いものの、賃貸と比べれば十分に自由なリフォームが実現します。

 「将来的に親と同居するかもしれない」

「自分の体力に合った家に作り替えていきたい」

 このような希望がある人は、持ち家を選択するのがおすすめです。

メリット③住宅ローン完済後は住居費が大幅に減る

持ち家の購入には数千万単位の金額がかかるため、住宅ローンを組んで購入費用を銀行から借りるのが一般的です。最長で35年という長期のローンを組むことが多いですが、それでもいつか完済できる瞬間が訪れます。

完済後は住宅ローンの支払いがなくなり、固定資産税や修繕費の支払いのみで自宅に住み続けられます。働き盛りの年齢では大変なものの、老後は住居にかかるコストを大幅に引き下げることが可能です。

また、住宅ローン加入時に「団体信用生命保険」に加入する点もメリットです。契約者が死亡するなどの万が一の事態が発生した場合には、住宅ローンの残債が0円になります。

万が一の際でも家族が自宅でそのまま生活できるという安心感があるのは、持ち家ならではのメリットでしょう。

メリット④持ち家は住宅ローン控除によって税負担を抑えることができる

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住まいを購入した場合、「年末時点の住宅ローンの残高の0.7%」が、入居時から起算して最長13年間、所得税や住民税から控除される制度です。

 持ち家を購入する人は、ほとんどが住宅ローンを利用します。条件を満たして住宅ローン控除を利用することができれば所得税と住民税が控除されるため、同じ年収でも手取り額を増やすことができます。

 3,000万円の借り入れ残高が年末に残っていると仮定すると、控除額は「3,000万円×0.7%」で21万円にもなります。13年で数百万円の税制メリットが得られるため、持ち家を購入する際は必ず住宅ローン控除の条件を満たすようにしておきたいところです。

出典:国土交通省「住宅ローン減税」

持ち家のデメリット

持ち家のデメリットとして、まず考えられるのは「移動のしにくさ」です。住宅を所有してしまうと、簡単に売引っ越しという手段がとれなくなります。転勤や出向、転籍などの異動命令が下された場合、家族も引っ越して家を空けると住宅ローン控除が適用されなくなります。住宅ローン控除のことを考えて単身赴任になるケースも出てくるかもしれません。

2つ目のデメリットが、賃貸にない費用負担が発生することです。賃貸と違い、持ち家が古くなった場合の修繕は自分自身で行うことになります。そのほか固定資産税や都市計画税、マンションであれば修繕積立金などの負担も必要です。 

賃貸のメリット

持ち家には賃貸にないさまざまなメリットがありましたが、逆に賃貸のほうも持ち家にはないメリットが多くあります。

賃貸ならではのメリットのうち、代表的なものは以下のとおりです。

  • ・気軽に住み替えができる
  • ・修繕費用などの負担が少ない
  • ・固定資産税の支払いが不要

 

メリット①気軽に住み替えができる

賃貸物件に住み続けるメリットは、仕事やプライベートの事情に応じて気軽に住み替えができるところです。 

  • ・結婚したから1Kでは手狭になった
  • ・子供ができたから部屋数が多い物件に引っ越したい
  • ・転勤になったから転勤先の街に引っ越したい
  • ・親が要介護になったから実家の近くに住みたい

 このような事情を加味して、今の状態にあった物件に気軽に引っ越しできるのは賃貸ならではのメリットです。土地を購入して住宅ローン控除まで利用している場合は、このような気軽な引っ越しは実現できません。

仮にご近所トラブルになったとしても、最悪の場合は自分が引っ越せば解放されます。ライフイベントに合わせて「いつでも引っ越せる」というメリットを享受したい人は持ち家よりも賃貸が向いている可能性が高いです。

メリット②修繕費用などの負担が少ない

持ち家は、家主である本人やその家族が修繕やリフォーム費用を捻出する必要があります。一方、賃貸物件のオーナーは自分や家族ではなく、その物件を所有する大家です。よって、建物や各設備の修繕、定期メンテナンスをする責任は大家にあります。

共用部分の電灯などはもちろん、部屋に備え付けられたエアコンやトイレが壊れた場合でも、利用者側に相当の過失がない限りは大家の責任で修繕することになります。

賃貸を利用している入居者にとって、コスト負担をかけずに生活に必要な設備を修理・あるいは交換してもらえるメリットがあります。

貯金が苦手で毎月定額の貯金で将来の修繕に備えるのが難しいという人は、賃貸物件に住む方が急な高額出費を避けて安心して暮らせるかもしれません。

メリット③固定資産税の支払いが不要

賃貸物件の大きなメリットとして、「固定資産税の負担が必要ない」という点が挙げられます。持ち家の場合は固定資産税や、住む場所によっては都市計画税といった税金を納める義務が発生しますが、これらの税金が発生するのは固定資産税を所有している人です。

 賃貸物件に住む人はその物件を所有しているわけではないため、固定資産税・都市計画税の負担が必要ありません。

固定資産税は所有する固定資産の評価額に、標準税率となる1.4%を掛けて求めますが、自治体によっては税率が異なる場合もあります。

 都市計画税の税率は市町村の条例で決められますが、上限は固定資産税の課税標準額の0.3%です。

賃貸のデメリット

賃貸のデメリットは、部屋のなかの設備や間取りを自分で決めることができない点です。どのような間取りでどのような設備が設置されているかは、賃貸物件のオーナーの意向によって異なります。古い物件では壁が薄くて隣人の声が筒抜けだったり、家電の利用でブレーカーが落ちやすかったりと、少なからずストレスになることがあります。

 持ち家であればストレスになるところは建て替えやリフォームで対処できますが、賃貸では我慢して生活するか、引っ越しするしかありません。

 また、老後に費用がかかり続ける点も、賃貸のデメリットです。持ち家では住宅ローンさえ完済すれば固定資産税や都市計画税くらいしかコスト負担が発生しませんが、賃貸では住み続ける限りは家賃の支払いが発生します。

持ち家と賃貸を比較する際は「生涯コスト」を比べてみることが大切

持ち家と賃貸のどちらにするか決めきれない場合、「生涯コスト」を考えて比較することをおすすめします。

例えば、一般的に賃貸では「敷金・礼金が各1ヶ月分」などの初期費用がかかりますが、持ち家では数千万円かけて土地を購入したり建物を建てたり、マンションを購入したりする必要があります。

初期費用だけを考えれば賃貸のほうが費用を抑えやすいといえるでしょう。ただ、生涯ずっと住み続ける前提でいえば、賃貸は家賃を生涯にわたって負担し続けるデメリットがあります。持ち家は最長35年の住宅ローンさえ完済すれば、老後の住宅費用の負担は大きく減少します。

詳しくは「持ち家と賃貸の生涯コストを比較・シミュレーションしてみよう」で解説します。

一般的にいわれる持ち家と賃貸の「1,300万円の差」とは?

あくまでも一般的な説に過ぎませんが、「持ち家と賃貸では1,300万円のコスト差が発生する」といわれています。賃貸の生涯コストが、持ち家の生涯コストを1,300万円上回るという意味です。

そのような差が出るといわれている根拠としては、6580歳までの賃貸の家賃が1,300万円近くになることが挙げられます。

 家賃7万円の賃貸に6580歳まで15年間住み続けるとしたら「7万円×12ヶ月×15年=1,260万円」になります。持ち家で65歳までに住宅ローンを完済すればこれらの費用はかからないことが、この説の根拠になっています。

ただし、賃貸と持ち家でどのくらい差が出るかは前提条件によって異なるので、一概に持ち家の方が1,300万円分もお得とはいえません。

次章では簡易的に持ち家と賃貸のコスト比較をしてみるので、本当に賃貸と持ち家に1,300万円のコスト差が発生するのかチェックしてみて下さい。

持ち家と賃貸の生涯コストを比較・シミュレーションしてみよう

ここからは、持ち家を購入した場合のコスト負担と、賃貸物件に住み続けた場合のコスト負担を、一覧表を使って比較してみます。

あくまでも一例ですが、持ち家と賃貸のコストの差を調べている方は参考にしてみてください。

「一戸建て」における持ち家・賃貸の生涯コスト比較

一戸建てといえば土地と建物を購入して持ち家にするパターンが一般的ですが、なかには賃貸タイプの一戸建てもあります。

ここでは、4,000万円(一戸建ては土地も含む)の金額の物件を住宅ローンで購入し、35歳から80歳(おおむね男性の平均寿命)までの45年間にわたって住み続けた場合と、賃貸に住み続けた場合のコストを比較してみました。

【持ち家の前提条件】
借入金:4,000万円(頭金なし)
住宅ローン金利:1.90
住宅ローンの返済期間:35

【賃貸の前提条件】
家賃:月12万円
賃貸の居住期間:同じ物件に45年間住むと仮定
※家賃の値下がりは考慮しない

 

【一戸建て比較】

持ち家 賃貸
物件価格 4,000万円
ローンの利息 1,480万円
家賃 6,480万円
購入時諸費用 120万円と仮定
更新料 270万円
※2年に1回
※家賃1ヵ月分
管理費
修繕積立金
駐車場代 駐車できる土地があれば無料 駐車できる土地があれば無料
合計 5,600万円 6,750万円

※修繕費用や固定資産税は考慮しない

一戸建ての場合、費用体系は持ち家が「ローン残高+利息」、賃貸が「家賃+更新料」と比較的シンプルです。45年も同じ家で生活するとなると、住宅ローンの総額よりも家賃の総額が大きく上回ります。最長35年で返済が完了する持ち家と違い、家賃は住み続ける限り払う必要があるためです。

「マンション」における持ち家・賃貸の生涯コスト比較

続いて、同じ前提条件を用いて、マンションで35歳から45年間(男性の平均寿命近く)まで賃貸物件に住み続けた場合のシミュレーションをしてみます。

【持ち家の前提条件】
借入金:4,000万円(頭金なし)
住宅ローン金利:1.90
住宅ローンの返済期間:35 

【賃貸の前提条件】
家賃:月12万円
賃貸の居住期間:同じ物件に45年間住むと仮定
※家賃の値下がりは考慮しない

 

【マンション比較】

 

持ち家

賃貸

物件価格

4,000万円

ローンの利息

1,480万円

家賃

6,480万円

購入時諸費用

120万円と仮定

更新料

2年に1

※家賃1ヵ月分

270万円

管理費

540万円

※月1万円×45年と仮定

540万円

※月1万円×45年と仮定

修繕積立金

864万円

※月16,000円×45年と

仮定

駐車場代

270万円

※月5,000円×45年と仮定

270万円

※月5,000×45年と仮定

合計

7,274万円

7,560万円

※修繕費用や固定資産税は考慮しない

マンションでは賃貸と持ち家の差が286万円と、一戸建てに比べればわずかにとどまっています。持ち家でマンションを購入すると「修繕積立金」が発生しますが、その分で賃貸に近い生涯コストになる可能性もあります。 

持ち家が向いている人と賃貸が向いている人の特徴

持ち家が向いているのか、賃貸が向いているのかは、ライフスタイルや将来設計によっても大きく異なります。生涯コストに差が出ていても、必ずしも安い方が正しいとは限りません。

ここでは、持ち家に向いている人と、賃貸に向いている人のそれぞれの特徴について紹介します。

持ち家が向いている人の特徴

持ち家が向いているのは、すでに自分の人生のライフプランがほぼ決まっているような人です。住宅ローンを支払うことになる3050代は毎月のやりくりは大変ですが、完済すれば老後の支出は大きく減少します。

住宅費用の支出が減った分だけ趣味の時間や食事にお金を捻出できるようになり、豊かな老後を実現させやすくなります。また「すでに結婚して子供もいることから、遠方に転勤の可能性が低い」「転職せずに今の仕事で定年を迎える可能性が高い」という人たちも、ライフプランに変更が生じにくいことで、持ち家に向いているといえるでしょう。

また、収入面で安定していることも、持ち家に向く人の条件です。持ち家は住宅ローンを最長35年にわたって返済することになり、賃貸と違って「生活レベルを落として家賃を下げる」といったことができません。返済遅れが発生しないよう、毎月安定した収入が得られる人が持ち家に向いています。

賃貸が向いている人の特徴

賃貸物件が向いている人は、まだライフプランのゴールが描けていない人です。「頻繁に転勤が発生する」「今後まだ転職する可能性がある」「結婚相手がまだ見つかっていない」という人は、今後ライフプランが大きく変更になることも考えられるでしょう。

このような人が持ち家に住んでしまうとライフプランに応じた引っ越しが気軽にできず、かえって仕事に悪影響になることも考えられます。賃貸であれば引っ越しは容易であり、ライフプランに合わせて柔軟に住む場所を変更できます。

収入面では、収入の安定性が欠ける働き方をしている人は賃貸が向いていることがあります。個人事業主は一般的に住宅ローンの審査で正社員より不利になるケースもあるようですが、賃貸なら気になりません。もし収入が減っても、引っ越して家賃が安い物件に住み替えることで対応できます。

まとめ

持ち家と賃貸では一般的に生涯コストに1,300万円の差が出ると言われていますが、今回の試算では一戸建ての賃貸では似たような結果になりました。一方でマンションの場合は修繕積立金の存在もあって、持ち家と賃貸にあまり大きな差が見られません。

ただ、今回の試算はあくまでも一例です。住む地域や選ぶ物件によって計算結果は異なるため、物件ごとにしっかりと費用やメリットを比較しましょう。

持ち家と賃貸のどちらに住むか悩む場合は、不動産を専門にするファイナンシャルプランナー(FP)に相談してみましょう。

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